「紅葉」や「銀杏」は秋を代表する彩りの樹木ですが、日本の食の歴史においては「獣肉」を表す「隠語(いんご)」でもありました。奈良時代からの「仏教思想による獣肉忌避(きひ、忌み嫌って避けること)」や、江戸時代中期の「五代将軍・徳川綱吉(在職1680~1709)」による「生類憐みの令(しょうるいあわれみのれい)」などにより、日本では表立って肉食が難しい時代が長く続きました。そこで人々は、獣肉店を「滋養強壮の薬屋」、肉食を「薬喰い」と称し、獣肉を植物などの「隠語」で呼ぶことで、役人の取締りをかわしながら肉食文化をつないで来たのです。それは、鹿肉=紅葉(もみじ):花札の絵柄「紅葉に鹿」から。 鴨肉=銀杏(いちょう):鴨の足の水かきの形が銀杏の葉に似ていることから。 猪肉=牡丹(ぼたん):薄切り肉を皿に盛った姿が牡丹の花に似ていることから。 馬肉=桜(さくら):切り口が鮮やかな桜色をしていることから。 鶏肉=柏(かしわ):羽の色が茶色い柏の葉に似ていることから。 ウサギ肉=月夜(げつよ):月にウサギがいるという伝承から、など。「生類憐みの令」は綱吉死去後に廃止されましたが、日本人が牛肉や豚肉を一般的に食べるようになったのは明治以降、そして日常的に肉料理を楽しむようになったのは戦後のことです。こうした言葉遊びによる肉食文化は、現代の和食文化にも大切に受け継がれています。(2026.10/15) |