明治維新の混乱も落ち着き、日本が近代国家としての地位を築こうとしていた頃、財界人から「首都に外国からの賓客や著名人を泊める格式の高いホテルがないのは国家の恥だ」との声が上がり、莫大な資金を集めて、東京・日比谷に「帝国ホテル」が建設され、明治23年(1890)11月20日、営業を開始しました。木造レンガ造り3階建てルネッサンス風の外観に、一般客室60室、スイートルーム10室、食堂や舞踏室、奏楽堂など、欧米の最新式設備を供えた、堂々たるホテルでした。しかし、大正8年(1919)、開業から約30年後、失火により全焼してしまいます。早期再建は急務で、当時の総支配人だった「林愛作」は、旧知のアメリカ人建築家「フランク・ロイド・ライト」に新館設計を依頼しました。やがて、大正12年(1923)7月に完成し、9月1日に落成記念披露宴が開かれるばかりとなっていました。ところが、その当日祝宴準備の真っ最中に「関東大震災」が起きたのです。周辺の多くの建物が倒壊したり火災に見舞われたりする中で、「帝国ホテルは」ほとんど無傷で済みました。この時代ですから耐震設計などなかったのですが、大震災に耐えたホテルとして世界的に知られるようになりました。こうして、昭和8年(1933)に「上高地帝国ホテル」、平成8年(1996)には「大阪帝国ホテル」が開業。さらに令和8年(2026)には「京都帝国ホテル」が祇園に開業予定。日比谷の「本館」も、令和18年(2030)に全面的に建て替えられ、「私設迎賓館」にふさわしい偉容を現すことでしょう。(2025.11/15) |